ぜん breath IX

空間の風景 2

ある者は生まれ変わり、またある者は表情を変えて空間に戻って来ました。ワイヤーの骨と薄布(バレエのチュチュに使うやつ)の肌や衣服を身に付け、紙粘土の顔を付けたビー玉の瞳の住人たち。今年はどんな空間と時間を見つめたのでしょう。
入口正面に立つ女性。前回は奥の片隅にいたのが今年は目立つ場所に。緑の瞳で静かに笑っていました。

彼女の右にぶら下がるトウモロコシは例年あるパイプ風鈴を揺らしてもらうために付けたもの。

入口正面上には巨大なトンボがゆっくり回っていた。既製の電池で回るプロペラ飛行機に取り付けただけのもの。

「飛んでるトンボは見るけど、その場で回ってるだけの奴はいないよ〜!」と、小学生のY君の言い分。これしか出来ませんでした。トンボを捕まえる時、指でくるくる回して近づくけど、これじゃあこっちが目が回るね。

今年の壁面、ワイヤーのカタツムリもこの写真でよく見えます。

空間に入ってすぐ左手にいたのは指に大きなトンボがとまる黄色い服と瞳の女の子。逆の手にはチリンチリンとミニ鳴り子を持っている。

少女の後ろに見えるのは紙パイプに板を乗せただけのバランスボード。これで遊ぶ子供も多かったけど、思いっきり転んですり傷つくった男の子もいました。大丈夫だったかなぁ…。

去年人気だった小さな男の子は、今年は馬に跨がって登場。揺らすと一緒に揺れて走っているみたいです。青い瞳に緑のマント。心は草原へ飛ばして…。

「犬までいますね」と子供連れのお父さんに言われて「え?」と首を傾げてしまいました。これ、馬じゃなくて犬に見えますか???

優しい顔の少年はお気に入りです。

以外と人気があったのが、このおじいさん。まあ、いろんな意味での人気ですけどね。表情に癒されるという女性もいたし、部屋に欲しいという人もいた。反面、入口から入って振り返った場所に腰を降ろしていたので、飛び上がるほど驚いた女子中学生もいました。(人間って驚いて飛び上がるんだなぁと再確認しました)「爺さんのわりにマッチョだね」と言う人もいました。
知り合いのお子さん(3才・女の子)がこのおじいさんの顔をじっと覗き込んでいました。空間の隅の天井近くに去年入口にいた猿が今年もいました。展示会が終った後、別のイベントに貸し出されたお猿さんを見たこの女の子が言いました。

「私、これのおじいちゃん知ってる」

なんのことかと思ったら、このおじいさんのことでした。このことをお母さんに話すと、「実は…」と話してくれたこと。この子が言うことを聞かない時にこう言うと黙りこむそうです。

「そんなことしてると、おじいちゃんが来るよ!」

赤い髪に紺色のマント、黄色い服。異色の住人は二つの顔を持っていました。表は赤い瞳をして空を見上げる若い男、宮沢賢治の風の又三郎のような異空間の住人みたい。裏は水色の透き通る瞳をしたお婆さんの顔。赤い髪のせいで山姥のようにも見えます。気づいた人は「怖い」と言ってましたが…。どう見えるかはその人次第でしょう。
怖がられると言えば、この母子も以外と怖がられた。

「夢にでそう…」誰かが言っていた。

初回から参加の赤ん坊も目を開き、母親の腕の中で空間を見つめました。母の目に入る照明の灯りで涙を浮かべているようでもあります。揺らすとあやしているようだと言った人がいました。愛すべき母子の姿です。

「毎年、気になって入ってみたいと思っていたのですが…。すごいですねぇ」

いつも顔を合わせて、今年は特にお世話になった施設の清掃員の方と話すことができました。この展示会と同じ名前の「ゼンさん」という清掃員のおばさんがいると昨年聞いていたので、どうしているか尋ねると「骨折して入院しているんです」とのこと。責任者の彼は(年上ですが)ここに勤めてもう10年になるといいます。もともとはピアノ弾きだったとか。小物を創って誰かにあげるのが趣味だという年配の男性は、いつか自分の個展を開いてみたいと語っていました。その時はぜひご案内くださいと、ばらしの日に名刺を交換。ぜひ頑張ってください。ご案内を待っています。

空間奥に立っていた巨人も二つの顔を持っていました。表は静かに眉をひそめて怒りの表情。裏は泣き顔…。気づく人は少なかったけれど、泣き顔は涙も鼻水も流していました。人間の怒りと悲しみ、二面性、外面と内面…。空間を創った私自身にも色々とあった年でした。

そこに立つあなたは、どんな顔をしていたのでしょう。

「ビンゴですね」とお便りが来たのは去年のこと。そして10回を目標にしていた展示会もお陰さまで9回を終えることができました。これも訪れてくださる皆様、子供たち、協力し理解してくれる家族のお陰です。ありがとう。

「あの…吉田さんですか?」と見知らぬ男性に話しかけられて立ち止まると「これは全部、無償でやられているんですか?」と空間とそこで遊ぶ子供たちを指された。「そうですが…」と答えると「数年前に偶然入ったのですが、いつもご案内いただいていたのに来れなくて。せめて僕の分の切手代を受け取ってください」と千円札を差し出された。断れなかったので自作の本と交換に戴くことにしました。入口まで見送って出ると、外にお腹の大きな奥さんが一緒に来てくれていて座っていました。今度は生まれて来たお子さんと一緒にぜひいらしてください。お待ちしております。

岡山から来てくれた義姉さん親子、群馬から子供を連れて来てくれた友人とは5年ぶりぐらいの再会となりました。子供を連れて来てくれる友人も増えてきて、初めて会うお子さんと会うことや、その成長は楽しみのひとつです。そこにはそれぞれの生活があり、生き方があります。「生活こそ芸術だ」と言ったのは岡本太郎さんだったでしょうか。静かに空間を感じたい人はいい時間に来たり、子供で騒がしい時は出直したりして、ゆっくりと語り合うことができました。常連のIさんは会社の同僚と来てくれて、入口付近に小さな机と椅子を出してお茶を入れると、子供たちが走り回る中で二人だけの世界で語り合っていました。友人の母親(直接の知り合いとなりました)Fさんとやってきた連れの年配の女性が空間内の玩具を見て帰り際に言いました。「うちにある使わない昔のおもちゃ、貰っていただけるかしら…」

毎年来てくれているM.Mちゃんももう中学2年生になり、すっかり落ち着いてお姉さんらしくなりました。今年は毎日のように一人で来てくれて受付嬢(?)や子供たちの遊び相手になってくれました。訪れた知人に「娘です」と冗談で言ったらとんでもないといった風に首を振りました。いろいろありがとう。助かりました。ばらしの日にもピンクの蝶と乾燥トウモロコシをもらいに友達を連れてやって来ました。今度は家に遊びにおいで。

また会いましょう!お待ちしております。

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